化学と私。

隙あらば自分語りなんて言われるほどネットに跳梁跋扈する自分語りですが、その例にもれず私も自分語りをしようと思います。暇で隙だらけなので。

というのは建前(本音)で、つい先日研究室が決まって数年来目指していた有機化学の研究室に配属となったので語りたくなっただけです。数年来目指していたっていうのもなんとなく言いすぎだけれど。

幼少期から語っていたら長くなったので適当に読み飛ばしてください。

 

昔から図鑑とか博物館の類は好きで、小学校低学年の頃の愛読書は間違いなく家にあった昆虫か魚の図鑑でした。博物館や水族館の類も好きで、親も色々と連れて行ってくれたのでこんな人間に成長したのだと思います。もし子供ができたら連れて行きたいですね。そんなことあるんでしょうか。

とはいえ、当時から理系科目が好きかというとそういう訳でもなかったと思います。小学生の頃はむしろ歴史とかの方が好きだったので、漠然と文系かなぁぐらいに思っていました。それか当時はゲームが好きだったので、ゲームクリエイターになりたいと漠然と思っていました。懐かしい。

ごく普通の公立中学に進学し、そこで待ち受けていたのはとある社会科教師でした。初めのうちは無難に授業をうけていたものの、ノートの出来栄えが成績に反映されたり、肘をついて授業を聴いていたのを注意されることで段々反抗心が芽生えてきたのでクッソ適当なノートを提出し、肘をついて話半分に授業を聴き、担当の社会のテストで学年トップを取り通知表で5を取るという、なんとも中学生らしいかわいげのある反抗を行いました。今にして思えば完全に社会科教師の手のひらで踊らされている感じがしますし、たしか一度も満点は取れなかったので完全に負けています。ただ、あの時の反抗心は確かなもので社会科に関する熱は完全に薄れてしまったのです。

また一方で中学生の私は数学にハマっていました。それなりに勉強してそこそこの点数はとっていたものの、当時の私にはケアレスミス以外でどうしても解けない問題があったのです。テストの最後の問題です。

これはちょっと解説しないと分からないと思うので解説します。私の出身の埼玉県では、県内の中学生対象に北辰テストという模試のようなものが行われています。これは別に学校で強制で受けるとかそういうものではないのですが、県内の中学生で高校に進学希望ならまず間違いなくほぼ100%受けます。なぜかというと、この北辰テストの結果を私立高校の学校説明会に持っていくと、自分の偏差値が学校の基準を超えている場合、合格が確約される、つまり絶対に滑らないすべり止めができる(学校によっては授業料免除なんかも確約される)という県外の人に話すと絶対に驚かれ羨ましがられるトンデモテストだからです。実施元はかなり儲けているに違いないですが、受験生からすると私立高校の受験チャンスが年に5回ぐらいあるみたいなものの上に、私立高校の対策の必要がなくなり公立高校に集中できますし(埼玉県は一部の私立高校を除いて基本的に公立高校至上主義です)、中学教師としても受験者ほぼ全員が受けている模試があるのでアドバイスしやすいですし、私立高校としても受験生の質を確保しやすいのでwin-win-winです。この方式をとる限り私立高校<公立高校の図式が崩れにくいのが欠点ですが…。

完全に脱線したので話を戻すと、この北辰テストの数学のテストの最後の一問は通称”百点防止問題”と呼ばれ、難易度が他の問題に比べ数段高いのです。学校の定期テストもこれを意識してか、最後の一問をかなり難しめにしていました。適当に勉強していた当時の私には解けるはずもなく、まあしゃあないでしょぐらいの開き直りの精神でいたのですが、これを解くようなやつもいたのです。地頭がよい上に塾に通っているやつです。当然ライバル心が芽生え、とはいえさきほど社会科のくだりで話したような性格なので塾に通うことは無く(親に負担をかけるのが嫌だったこともあった)、”高校への数学”なんかを買ってやっていたりしました。大学への数学の方が知っている人が多いと思いますが、それの高校受験版です。完全にオーバーワークです。結果的にその人には勝てなかったものの、その過程で数学はかなり好きになりました。あの人高校は浦和高校に行ったけど今なにしてるんだろ。

そしてまた、化学との出会いがあったのも中学時代でした。中1か中2当時の私はニコニコ動画にハマっており(今も見ているけれど)、とりわけ”人類には早すぎる動画”が好きでした。前衛的な動画やシュールな動画によく付けられるタグで、これらの動画をまとめた「人類には早すぎるランキング」という動画があります。忘れもしない、人類には早すぎるランキング~16thシーズン~のED、「ベンゼンアクエリオン を 替え歌ってみた」、これが私が科学を、化学を、有機化学を志したきっかけです。

 

 

 高校化学で習う有機化学、とりわけ芳香族化合物に関してを創聖のアクエリオン一万年と二千年前から愛してるやつ)の替え歌で歌っているのですが、まずこれが替え歌のクオリティが高いのと声がかわいい上に歌が上手いのでハマり、聴いているうちにだんだんと「有機化合物、なんか良くない?」と思い始めます。とはいえなんとなくwikipediaを見たりしていたものの、当時の私には本腰を入れて有機化学を学ぼうという思いは無く、というかその方法が思い浮かばなかったので、なんとなくただ化学が好きなだけでした。

こうして数学と理科に目覚めた私は高校受験で県内最高峰の理数科…ではなく自宅から一番近い理数科を選びます。さすがに頭が足りなかった。とはいえ結果的にこれが正解で、高校ですばらしい先生と出会ったので人生どう転ぶか分からないものです。

化学に興味があった私は(中学時代の卓球部で運動部に嫌気がさしたというのもあり)、部活動見学で化学部に行きました。一人だと心細かったので友人を道連れにして。「化学部?」と怪訝な顔をされたものの化学部へと引きずっていきなんだかんだで共に入部し最終的に友人の進路に大きく影響を与えた(と思われる)ので、なんというか、心細さから人の人生をめちゃめちゃに捻じ曲げた気がしないでもないですが多分悪くはなってない…よね?(多分)

化学部の顧問の先生というのが恐らく学校一の変わり者というか、ものすごい熱意の持ち主で、分かりやすく教えるためには高校範囲を逸脱して大学の内容にも踏み込むという素晴らしい理念をお持ちだったのです。当然ながら化学部にもその風潮があって、(部に予算がほとんどないこともあって)実験をして発表をするのではなく、自主ゼミ的に高校化学の範囲を(当然大学の範囲も触りつつ)数か月で一周し化学グランプリという国際化学オリンピックの日本予選に挑戦する、という科学系の部活としてはかなり異色な活動内容でした。大学の教科書にも手を出し、アトキンスだったりシュライバーだったりを読んだりもしたり。そして私もまたやりたかった化学に触れるとあってはりきって勉強し、化学って楽しいよね!一緒に楽しもうよ!状態となったのです。(全部ゴッ倒す!!)

そしてまた有機化学への熱意を支えたのは有機化学美術館という超有名サイトです。このサイトで高校範囲外の有機分子に触れ、愛を深めたのです。私が言うまでもなくやっぱり名サイト。

途中生物に浮気しつつ(高3の時の日本生物学オリンピックの二次予選が化学グランプリの二次予選と日程被ってて行けなかったの絶対忘れないからな)も、高3の化学グランプリで二次予選出場を果たし、赴いたのが名古屋大学です。そこで聴いたスピーチがあの話の上手い某教授のスピーチです。そりゃ心掴まれるわけですよ。いや本当の所は化学グランプリの前には京大志望だったのを無理だと悟って名大志望に落としていたので、某教授のスピーチがきっかけというわけではないですが、少なくとも志望を変えさせないだけの魔力はありました。

化学グランプリでは何故か金賞を頂き、それをひっさげて推薦入試に出願したらありがたいことに合格して名大理学部へと入学し、一般教養で熱意を失いかけながらも化学科へと進学し、そして今なんとか有機化学の研究室(某教授の研究室ではないですが)へと配属されることができました。

 

まさかニコニコ動画の替え歌動画がきっかけで化学を志し、埼玉から名古屋へと移るなんて中学の頃の自分は夢にも思っていなかったでしょう。ほんとに人生というのはどうなるか分からないものです。4月からの研究室生活もどうなるか分からないですが、中学の自分と同じく化学を楽しんでいきたいなと、そう思った次第です。自分語り終わり!