「有機化学って固有の名前が多過ぎて覚えられない!」なんて高校生も多いのでは?
かくいう私も以前はそうでした。そこで、「語源を知れば覚えやすいんじゃない?」と思い立ち高校化学に出てくる有機化合物の名称の語源をひたすらに調べたことがあります。そのデータを眠らせておくのも何となくもったいないので、せっかくなので公開します。もしかしたら化学の成績に繋がる!かもしれない!
データはネットで収集しただけなので、Wikipediaだったら「この記事には独自研究が含まれているおそれがあります。」が間違いなく貼り付けられる記事ですが、参考程度にどうぞ。
脂肪族化合物
カルボン酸 Carboxylic acid
ギ酸 formic acid
ラテン語の「formica 蟻」に由来する。ギ酸はヤマアリの死骸を蒸留して単離された。
酢酸 acetic acid
ラテン語の「acer 鋭い」から「acere すっぱい」「acetum 酢」と変化した。
プロピオン酸 propionic acid
ギリシャ語の「protos pion 第一の脂肪」から由来する。一番目の脂肪酸だと考えられたと思われる。*1
酪酸 butylic acid
ラテン語の「butyrum バター」から由来する。酪酸はバターから得られた。
シュウ酸 oxalic acid
シュウは漢字で「蓚」で「カタバミ oxalis」を意味する。
フマル酸 fumaric acid
「フマリア fumaria」に由来する。
マレイン酸 maleic acid
「リンゴ酸 malic acid」に由来する。マレイン酸はリンゴ酸を脱水すると得られる。リンゴ酸は実際にリンゴ(malum)から発見された。
アルコール Alcohol
アラビア語の「al-khwl さらさらしているもの」から由来するとの説がある。
メタノール methanol
ギリシア語の「μεθυ ὕλη methu hyle 木材の酒」から由来する。メタノールは木材を乾留して得られる木タールに含まれており、木精(wood spirit)ともいう。
エタノール ethanol
古代ギリシア語の「αἰθήρ aither 天空に満つもの」から由来する。*2
プロパノール propanol
ブタノール butanol
それぞれプロピオン酸、酪酸から由来する。
アルカン Alkane
アルコールから由来しているとの説がある。
メタン methane
エタン ethane
プロパン propane
ブタン butane
プロピオン酸、酪酸に由来する。
エーテル Ether
古代ギリシア語の「αἰθήρ aither 天空に満つもの」から由来する。
アルデヒド Aldehyde
ラテン語の「alcohol dehydrogenatum 脱水素アルコール」に由来する。
ホルムアルデヒド formaldehyde
アセトアルデヒド acetaldehyde
ギ酸、酢酸に由来する。
ケトン Ketone
古いドイツ語の「Aketon アセトン」に由来する。
アセトン acetone
金属酢酸塩を乾留して得られたことに由来する。
エステル Ester
ドイツ語の「Essigäther 酢のエーテル」に由来する。
アミン Amine
アンモニア ammoniaを由来とする。アンモニアは、エジプトのアモン神殿の近くからアンモニウム塩が産出した事によって、ラテン語の 「sol ammoniacum アモンの塩」に由来する。*3
芳香族化合物
ベンゼン benzene
安息香酸 benzoic acidから由来する。
安息香酸 benzoic acid
benjamin treeから採るバルサム、安息香に含まれていることに由来する。安息香の名前の由来はアルサケス朝パルティア(漢名が安息)でよく用いられた香りと安息香の香りが似ていた説など、諸説ある。*4
トルエン toluene
南アフリカに分布するトルーバルサムという木から単離されたことによる。
キシレン xylene
古代ギリシア語の「χύλο 木の」という接頭辞に由来する。木炭を作る際の乾留で得られる成分として発見された。*5
スチレン styrene
エゴノキ科の木からとれる樹脂、「stylax 蘇合香」から単離されたことによる。
クメン cumene
クミン酸(4-イソプロピル安息香酸)に由来する。
ナフタレン naphthalene
ナフサ naphthaから単離されたことによる。
アントラセン anthracene
古代ギリシア語の「ἄνθραξ ánthrax 石炭」に由来する。
フェナントレン phenanthrene
古代ギリシア語の「φαίνω phaínō 輝く」という接頭辞+anthraceneから。*6
フェノール phenol
フェニル基のアルコールであることから。フェニル基は、「φαίνω phaínō 輝く」からで、もともとコールタールの蒸留から芳香族化合物を得ており、「ガス灯を照らすもの」から来ている。
クレゾール cresol
ブナなどの乾留の際、生じる水蒸気と共に放出される油層を蒸留して得られる木クレオソートに多く含まれることが名前の由来である。クレオソートの名前の由来は、はじめ、肉を燻製する暖炉の煙から分離されたため、ギリシア語で「kréas sōtēr 肉の保存者」による。
フタル酸 phthalic acid
ナフタレンを酸化して得られることから。
サリチル酸 salicylic acid
ラテン語の「salix 柳」による。柳に含まれる。
アニリン aniline
インド藍(アニル)から得られる染料、インジゴを強く熱して得られたことによる。
高校化学の範囲内で、「これが入ってないぞ!」ってものがありましたらぜひ言ってくださいまし。
*1:ギリシャ語で脂肪はλίπος líposというらしいが、pionは昔用いられた語なのだろうか?
*2:エーテルと語源が同じなのは共に揮発性が高いためだろうか?
*3:アメン(アモン)はエジプトの太陽神である。アンモナイトもアメンに由来する。ちなみにアーメンはまた別の語(ヘブライ語)らしい。
*4:benjaminは人名ではなく、アラビア語のルバーン・ジャーウィー لبان خاويが訛ったものであるとも言われる。
*5:シロフォンxylophoneの語頭も同様。xylo-はザイロと発音するほうが実際の発音に近く、キシレンはザイリーン、シロフォンはザイロフォーンの方が忠実らしい。
*6:おそらく、フェナントレンは蛍光が可視光になるのに対してアントラセンはそうではないからであろう。