2019/07/18

思えば、初めて所謂”深夜アニメ”を観たのは2011年の「日常」であったと思う。クラスメートに勧められて見始め、あのシュールギャグとそれを実現する精緻なアニメーション(思えばその精緻さ自体がシュールな雰囲気を醸し出していたとも言えよう)に一人夜中のベッドでワンセグの中の世界に魅了された。

 

当時はアニメを録画するというのもなんとなく気恥ずかしく、家の間取り上居間のテレビを深夜に使えなかったために、自室のベッドで壁にもたれ、窓に掲げてアンテナを伸ばし、弱い電波を拾ってワンセグを観るという方法でアニメを見ていた。今となってはワンセグガラケーも(当時はそんな風に呼ばれるとは思いもしていなかったが)時代の彼方へと追いやられ、00年代の象徴とも言うべき扱いとなってしまった。

 

アニメに対する気恥ずかしさというと、日常の少し前、けいおん!が流行していた時期はアニメにさして興味があるわけでもなく、ゴールデンタイムの音楽番組にたまに流れるアニソンに対してなんとなく居心地の悪さを感じていたくらいだが(これは今でも少しある)、その観念を打ち破る力が確かにあったのだと思う。掌の中の小さな窓には無限の世界が間違いなく広がっていた。

 

その後は日常系と百合にハマり、そのジャンルの作品を見るようになったのだが、その中でもひと際大きなインパクトだったのが響け!ユーフォニアムであった。ストーリーもさることながら、随所に差し込まれる光学的な演出技法、原作の魅力をさらに引き出すアニメーションの力に深く感心した。

 

後からも様々な作品を観た。らき☆すたけいおん!中二病でも恋がしたい!小林さんちのメイドラゴンたまこラブストーリー、どれもがまだ深く新鮮な感動として心に残っている。アニメを通じて、京都にも行ったし、滋賀や鹿児島にも旅行に行った。画面の中の世界が、逆に私の世界も大きく広げてくれた。

 

 

私にこの世界を教えてくれて本当にありがとう。そしてきっと、必ずや、また。

院試とアニメと百合と性別の話

B4にもなって夏にもなって院試勉強というものをやっているのですが、どうにも気分がのらないのでちょっと文章を書きます。気分転換です。

 

・院試勉強の話。

 

私の所の院試というのは科目が実質化学しかないので、八月末までひたすら化学をしなければいけないわけですが、やればやるほど「化学、無限では…?」という気分になってきました。もうね、有機化学無機化学も分析化学も量子化学も化学熱力学も分からないです。無限…!研究分野的に量子化学をちゃんと勉強しないとなという気持ちはあるものの、気持ちと能力はすぐには直結しないものでなんだかなぁという感じです。もっと必要に駆られたら勉強する気が起きるかな。院試という必要に駆られているんですけど。

それはそうと、実験から一旦離れてみると、もうちょっと効率的に出来たな…とか、そういうことに気が付くものですね。有機合成はともすれば単純作業になりがちな部分もありますけど、もうちょっと頭を回しながら実験を進めたいものです。なんというか環境の変化と初めての主体的な(主体的か?)実験で手一杯だった部分はあるので、院試後はもうちょっと俯瞰で見つめながら効率よくわしわし進めていきたいです。院試受かるかわっかんないけど!!!

 

 

ゾンビランドサガを6話まで見ました。

 

院試の話をしといて早々に院試勉強集中しろよって感じですけど、ゾンビランドサガを見ています。2018年の秋クールに放送されてかなり話題になっていましたが、天邪鬼を発揮して今の今まで見ていなかったのです。とあるきっかけでOPの「徒花ネクロマンサー」を聴き、あんまりにいい曲だったので本編も勉強のお供に見始めたのですが、おかげで勉強に集中できません。めっちゃめちゃ面白いです。それが私たちのサガだから!!

あらすじとしてはゾンビになった女の子たちがアイドルとして佐賀を盛り上げる、という感じなのですが、とくに純子ちゃんと愛ちゃんの話が上手く生前の設定を使っていて素直に感心しました。すごい。あとすごいかわいい。純愛…。

北九州(九州の北)もあまりちゃんと行けていないので聖地巡礼がてら行きたいです。

 

 

・百合の話

 

「百合は綺麗だからすき」みたいな話あるじゃないですか、あれが私死ぬほど嫌いなんですよね。いや死ぬほど嫌いというとちょっと言葉が強すぎるんですけどすごいもやもやするんですよね。

男女の恋愛は綺麗じゃないのか???!!!男性同士の恋愛が綺麗じゃないとでも?????身ぎれいな人たちにしか真の愛は芽生えないというの????!!!!綺麗じゃなかったら百合じゃないの????????????????!!!!!!!!!!!!えぇ!!!!!!!!!!!!????

いや、いいんですよ、別にもうそこまで行くと個々人のポリシーの問題になるのでこう口に出しはしません。苦笑いでその場をやり過ごしますよ。私も社会性というものを多分持っているはずなので。

ただ、ただ私がそう思われるのが嫌なだけなんです。もちろん綺麗な女の子が好きですし、顔の良い百合が好きですし、ゾンビランドサガの純愛ちゃんは顔がとてもいいです。かわいい。だからといって「綺麗だから百合が好き」ではないのです。おそらく大多数の人に分かりやすく言い換えるとすれば、「綺麗だから男女の恋愛が好き」と言えば違和感が伝わるでしょうか。意図的であろうと非意図的であろうと、そこに男女の恋愛以外の、あるいは話者の好みの外にある関係や行為への差別的意識を見出すのは不自然ではないはずです。

「綺麗な百合が好き」は人の趣味嗜好ですが、「綺麗だから百合が好き」とは言ってほしくないのです。真に(言外の意味を含めて)そう思っているのなら、そう言うことを否定はできませんが…。心の中で軽蔑はしますけどね。

私はNLもBLもGLも等しく尊いものだと思っていますが、その中でなぜ百合がすきなのかと聞かれると「百合だから」としか答えようがないです。そもそも好きなものってなんで好きなのかなんて説明できなくないですか?逆に(あなたがNLを好きだとして、)どうしてNLが好きなの?と聞かれて答えられます?

 

 

・性別の話

 

ちょっとあんまりここの話を本気で捉えないでほしいんですけど、というのは別に本気でこの話について悩んでいるとかそういう訳ではなくて、ただちょっと自分語りをしたくなっただけなんですけど、みなさん自分の性別を自信をもって「どっちだ」って言えますか?

身体的な特徴だったりあるいは嗜好だったりで私も多分こっちだろうなというのはありますが、いまいち確信しきれていないところはあります。確信している人は何をもって確信しているんでしょうか?性別もまたスペクトラムなんだろうなとか、そんな感じのことをふわふわと考えているそんな感じです。

感想雑記(ひとりぼっちの○○生活5話)

原作で既に読んだシーンでも、映像としてみるとまた違った印象を抱くものでやはり媒体の違いというのは大きいのだなと思ったのでちょっと感想を書きます。

 

・ひとりぼっちの○○生活 ~5話

 

5話は紛れもなくアル回で、大変すばらしい出来だったわけですが、かわいさという点の他にもアルの性格についての掘り下げが為された回でもありました。すなわち、残念な本性とそれを取り繕って”世界の副委員長”として振る舞う外向きの姿です。

ひとりぼっちの○○生活ではぼっち以外の主要メンバーの4人は特に、人間関係において外面と内面の違いを抱えています。不良だと思われているけれど友達想いで素直ななこ、美人で高嶺の花な存在と思われているけれど実は忍者に憧れているラキター、友達を作らない主義だけれど実は友達に憧れている(?)(ややネタバレ)佳子ちゃん、そして文武両道才色兼備な完璧(副)委員長であろうとするけれど本当は残念なアル、そんな各々が抱えている内面をぼっちの前ではさらけ出せるというのが本作のハイパー尊いポイントです。

真の自分をさらけ出せる間柄というのは友達(というより親友?)の本質的な部分で、これはやはり素直で純粋なぼっちだから為せる技で、”友達になる”ということをぼっちなりに考え続けているからこそ真の友達に辿り着いているのでしょう。尊い

 

 

やがて君になる7巻

ちょっとちょっと、そこの方、”やがて君になる7巻”読みました??

読んでない?

でもちょっと抑えきれそうにないのでネタバレしながら語っていいですか?

 

もう一言でいうともう、佐伯沙弥香~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!

って感じです。今巻の主人公は間違いなく沙弥香でした。

 

そして沙弥香と侑の対比がバリッバリに効いてます。

燈子に対して先に一歩踏み込んだ侑、先に踏み込まなかった(込めなかった)沙弥香、

踏み込んで後悔している侑、踏み込んで満足している沙弥香、

あなたが好きな私でずっといられるの?、あなたが好きな私になりたいと思う、

燈子に手を引かれて階段を降りた侑、燈子の手を引いて階段を登った沙弥香、

「『好き』ってなんだったんだろう」、「好きよ燈子」

 

ズルい。関係性オタクなので泣いちゃう。

 

そしてボートの上での会話、「変わりゆくあなたをずっと好きでいられるのか?」、やがて君になるのテーマといっても過言ではないでしょう。好きを知っている沙弥香が好きを知らない燈子に対して、燈子と侑の関係に対してアドバイスをする形になっているのだから残酷です。ただ沙弥香にしかできない役回りではあるわけで、はー………こう落としてくるんだ………と脱帽の限りです。

示された回答である、「あなたは私の好きなあなたでいてくれるだろうっていう  信頼の言葉  かな」はそのまま燈子の侑に対する期待へのアンチテーゼになっていて、すなわち、「侑は私の好きな侑で、”私を好きにならない”侑でいてくれるだろう」という呪いを解く鍵になっているわけです。この呪いは沙弥香の答えと一見矛盾しているようではありますが、実のところこれは侑にかけている呪い以上に、七海燈子自身にかけている呪いであって、「好きとは束縛する言葉」だから、「侑が私を好きにならないでいてくれるから、私は誰にもならなくていい」から、「侑が私を好きになったら、本当の意味での七海燈子にはなれないかもしれないから」好きを拒絶し続けたのですが、沙弥香は変わり行く燈子をそれでも好きだと、いや、信頼しているのだと告げられてやっと、変わりゆくあなたはそれでもあなただという答えに辿り着けたわけです。

正直自分でも何書いてるのか分かんなくなってきましたが、とにかく129pでも述べられている通り「沙弥香じゃなきゃわからなかった」のは間違いないわけで、ある意味では「私だけがあなたの特別でいられた」のです。

ポピパの曲が良すぎる。

久々に本当に暇な時間を持てたので衝動の赴くまま文を書こうと思います。

 

これがね、すごく言いたいんですけど、ポピパの曲が良すぎる!!!!!!!!!んです!!!!!!!

毎朝大学に向かう時に色々と聴いているのですが、もう大体ツボなので私と同じ感性の人ならハマるんじゃないかなと思います。私と同じ感性の人なんているのか分からないけど。

 

そもそもポピパというのはBanG Dream!に登場するPoppin'Partyという五人組のガールズバンドで…というような形式的な説明はwikiなりpixiv大百科なりニコ大なりを各自ググって頂くとして、まずこの5人がキラキラしててまぶしい!知らぬ間に歳をとってしまったのでだんだんこういう青春の結晶を直視すると胸が苦しくなるようになってしまったのですが、まぁもうとにかく輝いてます。そして百合的にも美味しい。最高(さあ行こう)!

そして曲も素晴らしい。そもそもバンドを扱ってる作品なので、曲としてはいわゆるバンドサウンド、それでいてアニソンのテイストもある、もうそれ私の好きなとこ良いとこどりじゃん…という曲たち。最高(さあ行こう)!

メタ的な話をすると、楽曲はあの上松範康さん率いるElements Gardenがプロデュースしていて、もうそれだけで絶対いいじゃん…と思わざるを得ないです。上松さんといったら”ETERNAL BLAZE”とか”マジLOVE1000%/2000%”とか”革命デュアリズム”の作曲ですよ、ヤバ…名曲しかないじゃん…。そしてまた、メインのVocalの戸山香澄さんのCVの愛美さんが歌うっまいの。すごい。いい声してるの。さあ行こう!他の声優さんももちろんとってもいい声してます。個人的には有咲役の伊藤彩沙さんの歌声がハイパー好きです。

 

初めて聴いた曲は”1000回潤んだ空”なんですけど、これがもうほんといい曲なんです。静かにギターとキーボードとボーカルのみからスタートして、はじめのサビ、おもむろにベースとドラムが入ってきて5人揃ってからのサビ終わりにギターがドーン!ですよ、もうエモエモじゃないですか。間奏もいい…。間奏後にいったん静かにワンコーラスサビやってからもっかい盛り上げてサビなのも好き…ベタかもだけどベタなのがすき…。歌詞ラストが”ミュージックのスタート”なのも好き…。一番最後にこの歌詞もってくるの良くないですか???良い………。

 

エモ曲枠だと”八月のif”も好きです。こっちの曲は1000回潤んだ空とは違って曲の構成的にはかなり素直なのですが、もうとにかく曲調と歌詞のエモでぶん殴ってくる恐ろしい曲です。エネルギーに満ち満ちたはずの夏の空気にふと見つける寂寥感というか、そんな空気を感じるいい曲です。夏モチーフで普通そこに行く???すごくない????

 

同じく夏曲で今度はストレートに夏!という曲、"夏のドーン!"もいい曲なんです。どことなくJITTERIN'JINN/Whiteberryの”夏祭り”を彷彿とさせるような夏祭りソングで、かなりガールズバンドっぽい曲というか、素直に盛り上がれる曲です。こういうのもバリバリこなせるポピパ……よい……。

 

夏だけじゃない!冬曲として”クリスマスのうた”もいい曲なんです!ハンドベル(かな)のジングルベルのメロディからはじまって、コーラスが入って、声の重なりきれーとか思ってたらめっちゃくちゃにいいイントロが始まります。最高。これクリスマスに起こった事件を解決してハッピーエンドでエンドロールに行く映画のやつじゃん…!(交渉人真下正義ぐらいしかそんな感じの作品知らないですけど)。もうなんかキリスト教のクリスマスの雰囲気なんか一切合切気にせず盛り上がれる曲なのがいかにも日本のクリスマスって感じで良いですよね。二番サビをまるまるありしゃが歌ってるのも歌詞とあいまってエモがすごいです。クリスマスってこういう愛と平和のイベントでしたよね。

 

そもそもBanG Dream!には「夢を撃ち抜け!」みたいな意味があるように、夢を追いかける人への応援ソング的な楽曲も多々あり、"走り始めたばかりのキミに"なんかもそんな曲のひとつです。ギターはじめ全体的にちょっと重めな音で、それが力強く勇気をくれるようなそんな曲です。青春…。

 

走り始めたばかりのキミにカップリング曲(両A面なので厳密にはCPじゃないのかな)の”ティアドロップス”もまた重めのサウンドの、夢に向かう人の曲です。走り始めたばかりのキミへはどちらかというと純粋に応援する側の曲なのですが、ティアドロップスは夢を追いかける側の、折れてめげてもそれでも諦めないという感じの曲です。雰囲気としてはけいおん!のED曲に近いかも。あれはHTTがプロになったらとして曲を作っているそうなので、ガールズバンドっぽさの残るこの曲とはやっぱりちょっと違うかもしれない。どっちも好きですけど。

 

 BanG Dream!のテーマである青春と音楽を体現しているのが"ときめきエクスペリエンス!"です。なにせ歌詞にそのものずばり「青春と音楽」が出てきますし。サビの「叶え!届け!」「歌え!叫べ!」なんかもう迸る青春のきらめきです。泣いちゃう。エモなCメロからのラスサビ「進め!ポピパ!」がほんとすき。すき。

 

リーダーの戸山香澄さんといえば「キラキラ」がキーワードなのですが、キラキラといえば”キラキラだとか夢だとか~sing girls~”。直球の青春ソングが弱った心に沁みる…。キラキラだとか夢だとか希望だとかドキドキだとかでこの世界はまわり続けているんですよねほんとは。そっか…忘れてた…そんな気持ち…。

 

ここまで色々言っておいて何なんですけど、私実はアニメシリーズの方は見てないんですよね…(見ようとは思っている)。そんなアニメ、1期の集大成(らしい)曲が”前へススメ!”です。AメロBメロをメンバーのソロで繋いでいってサビ、Vo.の香澄ソロがきて、全員で歌う。「わたしは一人じゃないこと」……。もうそれだけで激エモじゃないですか……泣いちゃう………。アニメ見たらもっと感動できるのかな………。すご……。

 

そんな今を全力で駆ける彼女らもいわゆる普通の女の子なわけで、等身大な女子高生としての曲、"ガールズコード"もいい曲なんです………。LINEしたり、プリクラ撮ったり、ドリンクバー頼んで話し込んだり、そんな女子高生らしい歌詞かと思いきや「わたしはもしかしてみんなと出会うためギターを好きになったの?」だとか「急に寂しくってこのまま帰りたくないって」みたいなセンチメンタルな気持ちを出してくるのにドキッとするのがもう…ね?ラストの歌詞が天才的すぎてほんとたまらなく好きです。なんだろうなこの気持ち…。変に言語化しても絶対に表現しきれない気がする。

 

さて、最後に紹介したいのが”What's the POPIPA!?”、バンド紹介ソングで、キャラクターにたいするキャラソンみたいな位置づけの曲です。ファンならニヤッとしてしまうような小ネタが仕込まれてたり、ソロパートを回していったり、とにかくポピパらしい曲なのですが、曲単体としても熱くてほんといい曲なんです。二番サビの「青春とは足掻くものだぜ!そこから這い上がるんだ!」とかかっこ良すぎて泣いちゃう。

 

 

そんな感じで私の特に好きなポピパ曲を紹介したのですがこの他にもほんと名曲揃いで素晴らしいのでよかったらぜひ…。ポピパ以外にもバンドがあってまた違った雰囲気の曲を歌っているのできっと好きな曲があるはず。多分。

進め!ポピパ!明日へ走り抜けて!

桜の樹の下にはコミュ障たちの屍体が埋まっている!

桜の樹の下にはコミュ障たちの屍体が埋まっている!

 

これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。私はあの美しさをただただ無条件に受け入れていた。しかしいま、やっとわかる時が来た。桜の樹の下にはコミュ障の屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。

 

どうして私が毎春、世の中に数ある道楽の中でよりによってちっぽけな薄っぺらいもの、Twitterなんぞを、苦しそうにやっているのか―おまえはそれがわからないと言ったが―そして私にもやはりそれがわからないのだが―それもこれもやっぱり同じようなことに違いない。

 

いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あたりの空気の中へ一種神秘な雰囲気をまき散らすものだ。それはよく廻った独楽が完全な静止に澄むように、また、音楽の上手な演奏がきまってなにかの幻覚を伴うように、灼熱した生殖の幻覚させる後光のようなものだ。それはいまいましくもいみじくも、私の心を打たずにはおかない、不思議な、生き生きとした、美しさだ。

しかし、ある春のある時、私の心をひどく陰気にしたものもそれなのだ。私にはその美しさがなにか信じられないようなもののような気がした。私は反対に不安になり、憂鬱になり、空虚な気持ちになった。しかし、私はいまやっとわかった。

おまえ、この爛漫と咲き乱れている桜の樹の下へ、一つ一つコミュ障が埋まっていると想像してみるがいい。何が私をそんなに不安にしていたかがおまえには納得がいくだろう。

寡黙なもの、人との距離感が上手く掴めないもの、そして人間のようなもの、春にコミュ障はみな腐心して何かと関係を築こうとして、たまらなく疲労している。それで水晶のような涙を心にたらたらと垂らしている。桜の根は貪婪な蛸のように、それを抱きかかえ、いそぎんちゃくのような食糸のような毛根を集めて、その液体を吸っている。

何があんな花弁を作り、何があんな蕊を作っているのか、私は毛根の吸い上げる水晶のような液が静かな行列を作って、維管束のなかを夢のようにあがってゆくのが見えるようだ。

―おまえは何をそう苦しそうな顔をしているのだ。美しい透視術じゃないか。私はいまようやく瞳を据えて桜の花が見られるようになったのだ。あの春のあの時、私を不安がらせた神秘は昇華されたのだ。

あの春、家を出て、学校の中をひた歩きしていた。光のしぶきのなかからは、あちらからもこちらからも人の群れが生まれてきて、そぞろ歩くのが見えた。お前も知っているとおり、彼らはそこで美しい交遊をするのだ。何とか私も輪へと横入りしながらも過ごしていると、私は変なものに出くわした。それは春の風が乾いた巷へ、小さい水溜を残している、その人の輪の中だった。おまえはそれを何だったと思う。それは何万匹とも数の知れない、交遊の屍体だったのだ。隙間なく人の心を被っている、私の、彼らの意味を失った交遊が、光にちぢれて油のような光彩を流しているのだ。そこが外面の墓場だったのだ。

私はそれを見たとき、胸が衝かれるような気がした。自身を取り繕って交遊を嗜むコミュ障の自覚を味わった。

この体裁にはなにも私をよろこばすものはない。LINEもTwitterも、数字を左肩に煙らせて液晶に浮かぶ四角も、ただそれだけでは、もうろうとした心象に過ぎない。私には孤独が必要なんだ。その平衡があって、はじめて私の心象は明確になってくる。私の心は悪鬼のように交遊に渇いているが、私の心に孤独が完成するときにばかり、私の心は和んでくる。

―おまえは辛い顔をしているね。孤独なのか。それは私も同じことだ。何もそれを不愉快がることはない。愛想とごく僅かの交遊、それで私たちの外面は完成するのだ。

ああ、桜の樹の下には私が埋まっている!

いったいどこから浮かんできた空想かさっぱり見当のつかない屍体が、いまではまるで桜の樹と一つになって、どんなに頭を振っても離れてゆこうとはしない。

今こそ私は、あの桜の樹の下で酒宴をひらいている人たちを眺め、地へと呑まれることができる気がする。

陽光の下の桜の樹の下で、その根に抱かれて眠ることができる気がする。

新年度日記

令和、いいですね。

 

2019年度が始まったわけで、すなわち大学4年に進級してしまったわけです。名古屋に越してきてからもう丸3年、早いものです。ところで2019年度って平成31年度なんですか?令和元年度なんですか?

4月になったので冬アニメが終了して春アニメがスタートしましたね。難民的にはきららが無い!ということで冬以上にひんやりした春になりそうです。〇〇生活があるのでなんとか生きていけるかな…。

 

そしてまた冬アニメで話題になっていたケムリクサを暇な時間で一気見したので、感想を書きたいです。

ネタバレしそうなのでまだ見てない人は、アマゾンプライムで配信してるのですぐに見てきてください。とりあえず11話まで見てください。

 

やっぱり私、ロードムービー好きなんだなぁというのが一番思ったことです。ロードムービーというと有名なものだとスタンド・バイ・ミーだとか、アニメだとローリングガールズですとか、少女終末旅行ですとか、同じたつき監督のけものフレンズ(1期)もロードムービーになるかと思いますが、まあいわゆる旅の途中で起こる様々な出来事を描いた作品です。ある意味では水曜どうでしょうもある意味でロードムービーみたいなものなのかな。ノンフィクションですけど。

けものフレンズやケムリクサが上に挙げた作品のそれ以外とは明確に違うのが、ロードムービーとしての魅力に加えて、伏線回収の妙を兼ね備えていることです。どんどん伏線がばら撒かれていくのですが、そのばら撒き方も回収の仕方も上手い。序盤、舞台設定についてはほとんど知らされないまま物語は進行していきます。ここで視聴者を投げっぱなしにしないために働くのが、その作品世界に突然放り込まれる人物でかばんちゃんやわかばです。これらのキャラクターが自然に質問役になることによって無理なく説明とストーリーの進行が両立されます。こういうノイズの少なさも二作品の魅力だと思います。ストーリーも構図もノイズが少ないのでするっと23分見られるのがすごい。

いやというかあの3Dモデルかわいい。最初はちゃんと語ろうかなと思ってたんですけど上手いこと纏まらないのでもうなんか適当に書こう。

11話EDヤバくないですか?2話あたりで普通にEDが流れた時は影絵だけどネタバレじゃん!と思ったのですがそもそも映像自体が伏線だとは………。

けもフレもそうでしたけど、ストーリーをきっちり組み立ててあると王道中の超王道展開でも激アツになるんですね………